禅宗様式五重塔

精緻を尽くした構造の妙、堂々たる風格と美観、崇高さなど、五重塔は建築美の極致であるといっても過言ではないだろう。
塔は、お釈迦さまの入滅後にその舎利(御遺骨等)を安置するために造られたもので、舎利壷を納めて祀った墓塔をインドではスツーパと称していた。そのスツーパが中国、朝鮮を経て日本に伝来し音訳されて卒塔婆となり、さらに塔婆から塔になったといわれている。
五重塔でこのスツーパにあたる部分が塔の屋根の上にある相輪で、相輪の下の屋根以下は基壇が発達、後に屋根の多い層塔(三重塔・五重塔・七重塔)になったのである。
香林寺五重塔は、細山・金程地区五大事業の完成を記念し、併せて先祖の供養と山川草木の慰霊、さらに未来永劫地域社会の発展を願って関係者が建立、香林寺に寄進されたものである。

禅宗様建築の特徴

香林寺五重塔は、臨済宗寺院の境内に建立された禅宗様の新塔である。
禅宗様建築の特徴は、基壇、扉、窓、柱、勾欄などにあり、基壇は自然石を用いた乱積で、和様のように木造の床を用いない。
扉は唐戸を使用し、和様は板扉を用いる。窓は花頭窓で、和様は連子窓。 柱は頭粽で上部に丸みがあり、長押を用いない。
和様の柱は頭粽がなく長押を用いる。勾欄は親柱の頂部に逆蓮を用い、最上部の架木は蕨手。和様の勾欄は橋などによく見られる跳勾欄、擬宝珠勾欄が用いられている。
このように香林寺五重塔は全て禅宗様建築で統一された塔で、わが国唯一のものである。
当塔は風圧を受ける建築場所ということも考慮され、従来の建築様式とは違い、躯体は鉄骨鉄筋コンクリート造りである。
構造は基礎部に深く打ち込まれたコンクリート支柱が基壇、軸部を貫通して相輪部に接し、それを囲う柱などの一式は全て木曽桧の良材で造り上げた複合塔であり、外観上は純木造建築である。したがって昭和の木造五重塔として高く評価されている。

屋根の反り
斗拱
 
勾蘭
基壇
花頭窓
 
香林寺五重塔立画図