五重塔安置仏像

香林寺五重塔の内部、内陣には、お釈迦さまの生誕の地インドにて制作した釈迦初転法輪像(石像・復刻)が安置されている。外陣には天平時代の技法であった脱活乾漆造の四天王像を、また二層から五層には十六羅漢像が祀られている。

釈迦初転法輪像

釈迦初転法輪像
香林寺五重塔の中心に祀られている釈迦初転法輪像とは、お釈迦さまがお悟りを開かれて初めて説法された際のお姿である。
釈迦初転法輪像はガンダーラ仏像やマトゥラー仏像を源泉にしてグプタ王朝時代(四世紀~五世紀)に出現したサールナート派の代表的な仏像で、現在、インドの至宝としてサールナート博物館に安置されている。
香林寺の仏像はその像をモデルとしてインドで復刻したものである。この仏像の特徴は優雅典麗にして、見る者をして自然と安らかな寂静の境地に引き込ませる不思議な魅力をそなえている。
お釈迦さまは満徳円満で、あらゆる願いごとをかなえるとされるが、特にこのご本尊は最初の説法のお姿であることから人間形成(教育)に功徳がある。

四天王像

多聞天
広目天
増長天
持国天
四天王は仏教の世界観で須弥山の中腹にあって四方の守りを固めている武将で、東西南北の守護神である。すなわち東に持国天、南に増長天、西に広目天、北に多聞天である。多聞天は独尊で祀られることも多く、毘沙門天とも呼ばれる。

香林寺の四天王像は邪鬼を踏み軸に獅噛をつけた甲冑(鎧)を着て高貴な怒りの表情をした姿で立ち、中央の釈迦像を守護するように四隅に安置されている。
この四天王像は天平時代(729~769)の技法を復元させ、脱活乾漆造で制作した。これは塑土をベースとして漆と苧の布を張り重ね、張り子の像を造り上げる造像技法である。
苧はいらくさ科の多年草で、インドや中国などでは2500年も前から利用されており、日本にはすでに天平時代には移入されて栽培されていたと推定される。
香林寺近辺には野生化した野苧が群生しているが、この地元の野苧を布に織り、この布に香林寺五重塔建立に心血を注いだ関係者や結縁者の名前を墨書して、四天王像の体内に貼り込んである。

十六羅漢像

第一 賓度羅跋囉惰闍尊者
十六羅漢は、お釈迦さまの遺嘱を受けて永くこの世にとどまり、仏法を守護し衆生を済度した特に秀れた16人の偉大な弟子たちを指す。